冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
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部屋に戻ると、すぐに電話が鳴った。
嫌な予感がする。
ザワザワと心が騒いだが、
実織がいた頃のままと変わらず、今この家にはここ俺の部屋の電話だけ。
俺が出ないわけにはいかなかった。
はい、とだけ告げ、電話に出ると、
『どうやら、まだくたばってない様だな』
冷たく、事務的な口調の声が、電話越しに聴こえた。
あぁ……、やはり予感は的中した。
「くたばったら、困るのはあんた達だろ」
ザワザワと騒ぐ心を抑え、俺は努めて冷静に応える。
『別に私は困らない。葬式の手配の手間が増えるだけだ』
「へぇ、わざわざ葬式出してくれんだ」
『一応、お前も〝真影〟の人間だからな。
……あぁ、くれぐれも人前で銃弾や刺されて死ぬなんて醜態は晒すなよ。
死ぬときは人目のつかない所で死んでくれ』
「〝死ぬときも〟だろ?」