冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
相変わらず、嫌な会話だけが続く。
電話の相手は、いつものように、
『そうだ、お前の居場所は裏だけだ。
表の〝真影紘夜〟は借り物ってことを覚えておけ』
「言われなくても、あんたのように愛想笑い振りまく表に興味はない」
『興味はなくとも、今度のパーティーではしっかり〝真影〟の人間を演じることだ。
この前のような騒ぎをおこすなよ。
昔からの馴染みの客や親戚達も来るんだからな』
「いわれなくても」
『一通り挨拶すませたら、体調が悪いと言って、お前は〝仕事〟しろ』
「……あぁ、わかってる」
わかってる。
いつものことだ。そう、いつものこと。
今度のパーティーでの俺の役割も、
この事務的で悪意さえ感じる会話も、
すべてーー