冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
ー実織ーそしてー紘夜ー
† ー実織ー †
はぁーー……
気づくと、ため息ばかり。
「ミオ、どうしたの?今日はため息ばっかり。元気ないし」
学校とバイトが一緒の世菜(せな)が、ドーナツケースの前でうつむく私の顔を覗き込む。
「お兄ちゃんとまたケンカでもした?」
ふふっ、と
イタズラっぽく世菜(せな)は微笑む。
世菜とは小学生の頃からの付き合いで、ジュン兄の過保護ぶりも知っていて、私の相談相手で、大切なトモダチ。
世菜は昔から私をミオと呼んでいた。
私は世菜の「ミオ」と呼ぶ声がスキ。
何だか安心する。
「…ケンカっていうか、一方的に拒否られた…」
思い出すだけでグッタリする。
それでも、世菜に話したい。聞いてほしかった。
答えが、
何かが、
見つかりそうな気がするからーー…