冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
男は、私の目の前で少し驚いた様な表情になる。
そして、急に
はははっ
と、笑い出した。
「なるほど。…そうだな」
そう言って、優しい笑顔を私に向けた。
今までとは違う雰囲気に、私は戸惑う。
なに?
なんでそんなに優しい笑顔になるの?
男の次々と分からない行動と仕草に、
私の頭は真っ白になる。
でも、
ここに連れられて来た時とは、違う感じがした。
いつの間にか、
震えは止まっていた。