冷たい雨に咲く紅い花【前篇】

男は、私の目の前で少し驚いた様な表情になる。

そして、急に

はははっ

 と、笑い出した。

「なるほど。…そうだな」


そう言って、優しい笑顔を私に向けた。
今までとは違う雰囲気に、私は戸惑う。


なに?

なんでそんなに優しい笑顔になるの?


男の次々と分からない行動と仕草に、
私の頭は真っ白になる。


でも、
ここに連れられて来た時とは、違う感じがした。



いつの間にか、


震えは止まっていた。



< 29 / 413 >

この作品をシェア

pagetop