冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「とにかく、風呂に入れ」

男は黒の紙箱から珍しい黒い煙草を一本取り出し、くわえる。
遠目にも独特のパッケージ。


黒地の箱に
【BLACK DEVIL】と金色で印字されてる。


こんな状況なのに、
似合い過ぎ、などと思ってしまった。


いやいや、そうじゃなかった。。。


「な…なんで、お風呂入らなきゃいけないのよ!?」

震えは止まったが、警戒を解いたワケじゃない。
睨む様に、私は男に目を向ける。


「風邪引くだろ、濡れたままじゃ」

鈍色のライターをポケットから取り出しながら、男がサラリという。


え?
風邪?

なに……?
心配してくれて…?

そういうこと?
そういうことなの?


なんだ……、

と、気が緩んだ瞬間、


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