冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
聞き慣れた名に、私の警戒心が少しゆるむ。
この方は、
実織様を知っている?
「あの、失礼ですが、貴方は…」
「オレは実織の兄だ。実織を出せ、連れて帰る」
なるほど、
実織様の例のお兄様!
実織様から噂は聞いていたので、私は一気に気が緩んだ。
が、
どうやら、和やかな雰囲気ではなかった。
どうしたことか、この実織様のお兄様は怒ってらっしゃるようなーー…
「真影がここに連れて来たんだろう!?
二度と会うなと言ったはずだ!」
どうやら、
確実に怒ってらっしゃるようです…