冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「…どこにいったんだ…実織」

つらそうな低い声でハッとなる。


そう…
ここに紘夜様も実織様もいない。

腕時計に視線を落とすと、夜の11時を過ぎていた。


紘夜様が遅いのは、いつもの事だと思えるけど、
実織様がこんな遅くまで、家族に連絡も入れずに遅いなんて、

確かにおかしい。


実織様はご家族をとても大切に思ってらっしゃる。
あの1週間で、家族を想う実織様を見てきた。



その、実織様が、

まだ帰らない?



何か、あったのですか?




紘夜様もご一緒なのでしょうか?


紘夜様…




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