冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
† ー準ー †
実織、どこに行った?
携帯は繋がらない。
バイト先に行ったら、7時にはあがったと聞いた。
遅くなるときはいつも連絡をくれていた実織が、
何も言わずに遅くなるなんて、ありえない。
「…どこにいったんだ…実織」
思わずそう呟くと、
目の前のメイド服の女が、ハッと顔を上げ、
しばらく何か考えるように視線が宙を彷徨う。
少しすると、
スッと、
屋敷内への道を塞いでいた体をよけ、
「…もしかしたら、紘夜様から連絡があるかもしれません。よろしければ、こちらでお待ちになってはいかがですか?」
俺を招くように、
彼女の手が屋敷内へと示した。
どうする?
心当たりはもう探し尽くした。
あとは、
繋がるところと言えば、真影だけだ。