冷たい雨に咲く紅い花【前篇】

「…なに、この女…泣くの我慢してんのか?」

掌を少しずらし、
赤髪の男が少し驚いた表情になる。



目に溢れる涙。
血の味がする口。

きっと私の表情は、見れたもんじゃない。

でも、
恥ずかしさより、


何より、
悔しくて、


血だらけの紘夜に守ってもらってばかりの、
何も出来ない自分が、

情けなくて



ごめん、
ごめんね、紘夜。


一緒に行こう、
って言ったのに、

私、何も出来なくて、


それどころか、


紘夜を、困らせてるだけーー


< 316 / 413 >

この作品をシェア

pagetop