冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「女性同伴じゃないと、周りがうるさくてな。いい縁談があるとか、なんとか…」

「ちょっ、ちょっと待って…!なにそれ!? 何なの急にーー…」

「いや、つい先日、長い巻き髪の女と出席すると言ってしまってな。
どうしようかと思ってたら、ちょうどお前、長い巻き髪だな、と」


ーは?



「…じゃあなに? あなたの〝でまかせ〟のために私連れてこられたの!?」

「ああ」

ひどく短い答え。


わなわなと、握りしめた手が震える。

これは怖さとか、寒さのせいじゃない!



私ははじめて、怒りでも震える事を、

知った。


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