冷たい雨に咲く紅い花【前篇】

「真朱(ヂェンヂュ)、車で待ってろと言ったろ」

私を抱える腕を緩める事なく、
赤髪の男は相変わらず鋭い声で言う。


「狙いは真影(ヂェンイン)じゃないの?なにしてんのよ」

交わされる、
聞き慣れない言葉。


フェイ?
この赤髪の男のこと?


ヂェンヂュ?
あの凛とした声の女の人が?


ヂェンイン?
この人達の狙いが?



「少しでも、これから先も私を抱きたいと思うなら、
その子から離れてよ」


気の強そうな声が、さらりと告げる。

暗闇の中、ビルの陰になって姿ははっきり見えない。
声で、女の人というくらいしか、わからない。


赤髪の男は小さく溜め息をつくと、
私を抱える腕の力を急に緩め、


ドン、
と、突き放した。

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