冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「真影の車をここに置いていく気?見つかったら面倒よ。真影とその子は真影の車に乗せて、他の仲間を呼んで車ごと運ばせたら?」
「…そうだな。おい、コーヤとその娘をコーヤの車に乗せて、アジトの連中に連絡しろ。ヤツらが来るまで、お前は見張ってろ」
「はい、ジンさん」
「くれぐれもこっちの車には来ないでよ?
気分がなえちゃうから」
「は、はい!真朱さん」
交わされる会話。
聞こえてはくるけど、
でも、
何も考えられない。
雑音のように、
ノイズが混ざっているように、
会話が通り抜ける。
と、そんな私に、
「そこのお嬢(ニィァン)」
女の人の声がしたけど、
最初、それが私のことだと気付かなかった。
「そこで転がってるお嬢(ニィァン)」
もう一度声がして、
その言葉で、私の事だと気付いた。