冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
その綺麗な人は、
私と視線を合わせた後、
スッと、
銃の方へ視線を一瞬ずらし、
再び、私を見た。
偶然?
それとも……?
考えを巡らせていると、
「おらっ、来い!少しでも妙なマネしたら、あの娘が痛い目にあうからな!」
大柄の男が紘夜に叫び、紘夜の車に連れて行こうとする。
声は大きいが、明らかに紘夜の方が上だと感じた。
素人目にも、
紘夜の目は鋭さを失ってはいない。
連れられる時、
私と視線が合うと、
逃げろ、
そう口を動かし、合図したしたように見えた。
カラダはボロボロだけど、
意識はしっかりしてるんだ。
だったらーー