冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「紘夜、紘夜……私、どうしたらいい?こんな時、どうしたらいいの?教えて!」

外に聞こえないように、
囁くような声で、
でも、
しっかりとした口調で俺に問う、実織。


正直、その様子に戸惑い驚いた。



「どうしたらいい?どうしたら、逃げられる?私、
私は……!」

「お、落ち着け、落ち着け実織!」

俺は実織の頬を両手で挟むようにして、
その目をしっかりと見る。



動揺して、取り乱してるわけではない。

その目は、
しっかりとした意思に包まれている。



そして、
俺は更に驚く、
実織が震える手で制服の影から取り出したものにーー。




見慣れた、黒く鈍い光を放つ銃。

マニューリン社製MR73



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