冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「洗面所?貸すのは全然構わないよ。
その左奥ドアの向こうにあるから。タオルも棚に新しいのがあるから自由に使って」

「ありがとうございます」

うつむき、
やはり感情が感じられない声。


「…君、大丈夫?」

そういえば、
彼女の制服も血で汚れていた。

てっきり紘の血かと思ったが、


「君もケガとかしてない?」

気になり、
彼女の肩に手を置き、声をかけると、


少し振り向いた彼女は、
唇を袖口で強く抑え、
溢れる涙を必死に抑えているようだった。


そして、
洗面所の方へと、駆け出した。


安心して、一気に動揺した?
最初はそれで泣くのかと思ったけど、


なにか、違う?



何だか、
気になった。



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