冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
ー静音ー
「大丈夫でしょうか?紘夜様…」
「なにが?」
「…バスルームから、もの凄い物音がしていますが……」
「ーあぁ、行き場のない怒りをブツけてるんだろう」
クククッ、と楽しそうに、紘夜様は笑った。
紘夜様はなんだか楽しそうだけれど、大丈夫だろうか?
お客様がバスルームに入られてから、
なんか、水音とか物音が凄いようなー……
「静音、彼女の制服をクリーニングに出しておいてくれ」
「あ、はい」
私が答え、紘夜様を見ると、
あの〝お客様〟の鞄を開け、何かを探しているようだった。
「紘夜様、勝手にそのようなことは…」
「ん?大丈夫、バレない様にやるさ」
いえいえ、そうではなくー…