冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
宴に明かされる紅い真実
「ようするに、どっちも引かないってことらしいよ?
君も大変なヤツに好かれた様だね」
そう囁く吉水さんの声を聞いたような、気がした。
深い、
深い、眠りの中で思い出す。
不味い血の味のする、ざらついたキス。
思い出すと、
泣きたくなる。
でも悔しいから、
泣きたくなくて、こらえる。
そうしてると、
思い出す。
甘い匂いのする、熱を感じる強引なキス。
それは、
力強くて、
熱を帯びていて、
甘く、
とけてしまうような、
とけてしまいたくなるような、
キスだった。