冷たい雨に咲く紅い花【前篇】

「呼び出しがきたからな」

そう言うと、
抜き取った立派な封筒をゴミ箱に、ポイっと、捨てた。


「え!え?何で捨てちゃうの!?」

慌ててゴミ箱から拾い上げようとすると、その私の手を紘夜が掴み、


「いいんだ。中身は入ってないんだから」

感情のない口調でそう告げる。

でも、
どこか哀しそうに見えるのは、私の気のせい?


「じゃあな、吉水」

掴んだ私の手を引っ張る様に、紘夜は部屋を出ようとする。


え、え?
ホントに退院しちゃうの?

いいの?


「よ、吉水さん…」

問いかける様に私が呼ぶと、


「あとは実織ちゃんに頼むよ。愛の力でバシッと治してやって」

そう言って、笑いながら手を振る吉水さん。



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