冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「あ、愛って……」
私はちょっと恥ずかしくなり、口ごもっていると、
「相変わらず恥ずかしいこと言ってんなよ、吉水」
呆れた口調の紘夜。
その紘夜に、
吉水さんは口の端を上げ、笑う。
「へぇ、オレの前で実織ちゃんに噛みつくようなキスした紘の方が、よっぽど恥ずかしいと思うけど?」
か、噛みつくような
キ、
ーーースって……
「別に、俺はなんともーー」
「私が恥ずかしいから!」
サラッとした紘夜を、
今度は私が引っ張るように、早足で歩き出す。
けど、
くるっと、吉水さんの方を振り返り、
「吉水さん、ありがとうございました」
ぺこっとお辞儀をした。