冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
チラ、と隣りを歩く紘夜を見上げる。
久しぶりの目線位置。
それだけで、笑みが零れる。
「何ニヤけてんだ?」
「ちがっ、ニヤけるんじゃないよっ」
ひどいよ、ニヤけてるって……
ん?
ニヤけてる、のかな?
思わず顔を触る。
確かに、顔はゆるんでる。。。
「……しょーがないじゃない。嬉しいんだもん」
こうして、紘夜と歩ける事が。
紘夜のカラダが、歩けるくらい治って。
嬉しいんだから、しょーがないよ。
3週間前の雨の日、
怖かったんだからーー。
血に染まる紘夜を助けられないんじゃないかと、
怖かった。
紘夜が死んじゃうんじゃないかと、
怖かった……。