冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「そうよ。全部、紘夜に背負わせるの。
でも、それは紘夜が望んだことよ」


そうなのかも、しれない。

紘夜は、
そうなのかもしれない。


でも、

「……もう、これ以上、紘夜に傷ついてほしくない。
これ以上、誰も傷つけてほしくない」


想うと、
溢れる涙。

思い出すのは、
血に染まった、紘夜の姿。


「……夕綺さんも、緋刃という人を失いたくないでしょう?」


好きなら、

愛しいなら、



「私は、緋刃を愛していないわ」


涼しげに、
勝ち誇ったように、

夕綺さんが言葉にする。



愛して、ない?

じゃあ、
どうしてーー


「退屈だったから。紘夜と敵対する男なら誰でもよかったの。
ちょっとしたゲームよ。
そう、誰でもよかった」


私の問いを見透かしたかのように、答えを口にする。


「でも、もう終わりにするわ」


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