冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「え?」
終わりに、ってーー
問いかけようとした、
その時、
「夕綺、こんな所にいたのか。広間で婚約者がお待ちだ」
現れた、
正装の男性。
長身で、理知的な眼鏡をかけた、その人。
すぐに、紘夜のお兄さんだと、
気付いた。
似ている、切れ長の目元。
黒い髪質。
外見は似ていた、けど
雰囲気は違った。
この人は、完璧過ぎる気がした。
近寄りがたい。
紘夜も怖くて、
人懐っこいとはいえないけど、
大丈夫といいながら無理をするから、
どこか、
放っておけなくて、
目が離せなかった。