冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
そんな紘夜だから、
愛しいと、
そばにいたいと、
想った。
「夕綺、こちらのお嬢さんはどなただ?招待客リストにいたか?」
訝しげに私を見る、お兄さんの視線。
それは、
まるで物を見定めるかのようにーー
「兄様、この方は紘夜の連れのようよ。
結構見栄えはいいでしょう?
これなら〝表〟の真影紘夜の婚約者、ってことでもいいんじゃなくて?」
ふふ、
と笑う夕綺さん。
「紘夜の、だと?」
一気に険しい表情になる。
〝紘夜〟と呼ぶ声に、嫌な感情があふれている。
ヘンだよ。
おかしいよ。
キョウダイなのに、こんな風に話すの?
キョウダイなのに、こんな風に呼ぶの?
『甘いンだよ、実織は』
思い出す、ジュン兄の声。
厳しいけど、愛情を感じた。
紘夜は、
ずっと、
こんな風に呼ばれていたの?
愛しいと、
そばにいたいと、
想った。
「夕綺、こちらのお嬢さんはどなただ?招待客リストにいたか?」
訝しげに私を見る、お兄さんの視線。
それは、
まるで物を見定めるかのようにーー
「兄様、この方は紘夜の連れのようよ。
結構見栄えはいいでしょう?
これなら〝表〟の真影紘夜の婚約者、ってことでもいいんじゃなくて?」
ふふ、
と笑う夕綺さん。
「紘夜の、だと?」
一気に険しい表情になる。
〝紘夜〟と呼ぶ声に、嫌な感情があふれている。
ヘンだよ。
おかしいよ。
キョウダイなのに、こんな風に話すの?
キョウダイなのに、こんな風に呼ぶの?
『甘いンだよ、実織は』
思い出す、ジュン兄の声。
厳しいけど、愛情を感じた。
紘夜は、
ずっと、
こんな風に呼ばれていたの?