冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「実織!」
ふわりと
風に合わせて舞う、桜色のドレスの裾が
チラ、
と庭の樹々の間に見えて、
名を、叫んだ。
思わず、
叫んでしまった。
「へぇー、お前〝実織〟っていうのか」
馴染みのある、
嫌な声が、
俺の愛しい名を軽々しく呼んだ。
瞬間、
しまった!
そう思ったが、
遅かった。
樹々に隠れるように、
実織と
そして、そばに見える赤い髪。
緋刃が
いた。
ふわりと
風に合わせて舞う、桜色のドレスの裾が
チラ、
と庭の樹々の間に見えて、
名を、叫んだ。
思わず、
叫んでしまった。
「へぇー、お前〝実織〟っていうのか」
馴染みのある、
嫌な声が、
俺の愛しい名を軽々しく呼んだ。
瞬間、
しまった!
そう思ったが、
遅かった。
樹々に隠れるように、
実織と
そして、そばに見える赤い髪。
緋刃が
いた。