冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
ガゥンーー!


重く響く銃声。


俺の体は、
うまくまわらない思考とともに、

動けず、

撃たれると覚悟した。




が、

「……逃げろ、紘……夜」


すぐそばで
父さんの声がした。

瞬間、


俺に倒れ込むように、
父さんの体が俺を包んだ。


紅く染まった、その体でーー。



「父……さん?」


呼びかける俺の声に、
苦しそうに震える父さんの瞼。




俺は、

うまくまわらない考えを捨て、
動いた。




緋刃に教わった術が、


体に染み付いていた。




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