冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
思い浮かべるだけで、こんな感情になる。
ーーあぁ……そうだな。
戻らないとな。
実織のもとへ。
あいつは
『じゃあ離さないで』
『一緒に行こう』
と、この俺に言ってくれた。
闇に沈んでいた俺に、光を与えてくれた。
枯れた俺の心に、花を咲かせてくれた。
その実織を哀しませることはしたくない。
俺のそばから実織がいなくなるなんて、
耐えられない。
『もう離さない』
そう、俺は実織に告げた。
その言葉を違えるわけにはいかない。