冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
あの紘夜という男の
黒い姿、
捕えて離さない眼、
力強い腕、
全部…。
でも、由緒正しき家柄の息子?
でも、人を殺したの?
なんだか、ワケが分からなくて、思考回路がグルグル回った。
「とにかく、なんの心配もなさらず、実織様は来週に末行われるパーティーの準備を私と共に致しましょう」
そうだった!
昨日、そんなことを言われた。
一週間後に行われるパーティーに、あの男と出席しろとー…
そして、
一週間帰らないか、一生帰らないか選べ、と言われて、
私は、一週間の方を選んだ。
不本意ながら。
思い出すだけで、怒りが込み上げてくる。