冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
そうだ、誰か、
ジュン兄にでも迎えに来てもらえばいいんだ。
そうだ、そうしよう!
「…申し訳ありませんが、それは出来ません。
今このお屋敷には、紘夜様のお部屋にしか電話はありません。
昨夜のうちに、紘夜様が他の部屋の電話は外してしまいました」
な、…なんてこと-…
あー……、携帯はあの時落としちゃったし…
打つ手がない…。
「一週間、一週間だけ紘夜さまのために、お時間を下さい。実織様」
と、深々と頭を下げ、お願いをする、静音さん。
「や、やだ、頭あげて下さい」
静音さんの行動に、私は慌てた。
ここまで静音さんにされちゃうと…
困ってしまう。
それに、
ここまで思われる紘夜、というあの男、
一体ー…