冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「なんだ、お姫様だっこでもしてほしかったか?」
「なっ!誰がそんな事っー…」
紘夜は、何が可笑しいのか、
食事の部屋に着くまで、
くくっ、と笑っていた。
っていうか、
最初からこれじゃあ、淑女も何もないんですけど……。
桜色のドレスが、きっと泣いてるわ。
とんでもない女に着られてしまった、ってーー。
紘夜に担がれる私。
私を担ぎ、ドンドン長い廊下を歩く紘夜。
顔をあげると、
静音さんが遠く、
段々と、
遠くに見える。