冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「……お前、面白い事言うな」
「え?何が?」
「何って、静音や他の者達もここで、なんて」
「それが、面白いの?私にはこんな広いところで、二人だけでご飯食べる方が可笑しいけど?」
「そういうものか?」
「だって、もったいないじゃない。こんなに広いのに…、あっ、紘夜の家族は?忙しいの?」
私がそう言うと、
紘夜は目を細め、苦い表情になる。
そして、
黒いズボンの後ろポケットから、前に見た黒い煙草の紙箱を取り出すと、
慣れた手つきで一本煙草をくわえ、鈍色のライターで火を点けた。