冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
長い間、共に過ごして、
そう気付いた。
だから、
紘夜様戻られる事も、この食事を口にする事も、ない。
「じゃあ、そのパンとおかず、私に下さい」
「え?」
実織様が二人分食べて下さるというのでしょうか?
それはそれで、無駄にならずにすみますが……
そんな事を思っていると、実織様は紘夜様の分のお皿を持って、
「キッチン、貸して下さい」
そう告げると、厨房に続く奥の部屋へと入って行く。
「え?み、実織様?」
さすがに私は慌てて実織様の後を追いかけ、厨房に向かった。