冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
私が厨房に着くと、
実織様はライ麦パンの上に、
朝食のメニューであったベーコンとスクランブルエッグをのせ、
もう一枚のライ麦パンで挟んでいた。
「実織様?何を……」
「あ、大丈夫、ちゃんと手は洗ったから」
いえ、そういうことではなくー…
「静音さん、冷蔵庫のもの、もらってもいいですか?」
「え?あ、はい。どうぞ…」
訳が分からない…。
私が言葉を失っている間、実織様はテキパキと動く。
桜色のドレスの裾を気にする事なくーー。