冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「出来たっ!」
実織様の達成感に溢れた声で、私はハッとなった。
「静音さん、冷蔵庫のクリームチーズとマーマレード少しもらいました」
「は、あ…、それで、実織様は何を?」
「え?あぁ…、紘夜の朝ご飯です」
え?
紘夜様の?
「でも、紘夜様はもう部屋に戻られ、きっとお仕事中ですよ?」
「えぇ、なので食べやすい様に、サンドイッチにしてみました」
笑顔で、実織様は出来たばかりのサンドイッチを見せてくれた。
ライ麦パンでベーコンとスクランブルエッグを挟んだものと、
胡桃パンに切り込みを入れ、
間にクリームチーズとオレンジのマーマレードを挟んだもの。