冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「紘夜様と怒鳴り合う事が出来るのは、実織様くらいですよ、きっと」

「うーん、馴れてるから、かな」

「馴れてる?」

「そう、ジュン兄…、あっ、私のお兄ちゃんがね、よく私のコト怒鳴るんだ、これが。
〝トロい〟とか、〝危なっかしい〟とか、それはもう、毎日の様に」


「実織様の事を心配してらっしゃるんですね」



心配……
してるかな?

今もーー…



「ねぇ、静音さん、
紘夜がウチに電話してくれたって言ってたよね?誰が出たか分かる?」

「はい。実織様のお母様です」


あー…、やっぱり。


ジュン兄だったら、『人様に迷惑掛けんじゃない!』
って、
連れにくるもんな、きっと。



でも、
その怒鳴り声が、今は欲しい……


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