冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「なんだ?」
私の、穴があく程の視線に応えるように、紘夜が私を見る。
「ビックリ、した…。紘夜って、可愛いとこあるんだ…」
「なっ、バカにしてんのか!?お前!」
あはははっ
思い切り私が笑うと、
紘夜が、私の頭をくしゃくしゃと乱暴に撫でる。
私は、せっかく静音さんに結い上げてもらった髪を守ろうと逃げる。
でも、
紘夜に腕を掴まれ引き寄せられた。
そして、
「その桜色、似合うな」
そう耳元で、
紘夜が、囁いた。