冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
視線を、合わせようともしない。


だから、

「戻れったって、こんなケガしてる紘夜を一人置いて、行けるわけないでしょう!?」

視線を合わせようとしない、紘夜
だから、

言葉に出来た。




部屋に戻れだの、お前には関係ないだの、

紘夜は文句を言ったが、構わず、
なんとか玄関から一番近い部屋まで、紘夜を連れて行った。



ベッドに寝かせようとしたら、

「いい、血で汚れる」

と言って、扉の横に座り込んでしまった。


壁に寄り掛かり、もう動こうとはしない。



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