冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
私は溜め息を一つつくと、
バスルームから幾つかタオルを持って来た。



「見せて、傷。止血するから」

私が紘夜の黒いコートを脱がせようとすると、


「お前、出来るのか?無理すんな」

傷口を押さえていた右手で、私の手を止めた。



その手は、
紅く染まって、

雨で、冷たくなっていた。


その手を見るだけで、瞼が熱くなる。




雨とは違うものが零れそうになったけど、


私は堪えた。



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