冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「ほら、このシャツで止血であてたタオル縛ってくれ」

「は、はい…」


出来るだけ紘夜の方を見ないように、二の腕の傷口にタオルをあてて、肘の近くと肩の近くをシャツで結んだ。



肩のあたりを強く結びながらも、

紘夜が、近くてーー


広い肩幅、
引き締まった腕、


な、なんか、手が震える……



「なに?俺の体、意識してるわけ?」

ドクン


「そっ、そそそんなワケないでしょ!なに言ってるの!?」

「顔も耳も真っ赤にして、なに言ってる。お前は」


イジワルな紘夜の声が、
耳をくすぐる。



「うっ、うるさいなっ。だいたいこんなケガして、私がいなかったらどうするのよ!?」

「こんな時のために、知り合いの医者がいるんだが、
今日は留守だった」


こんな時ー…


こんな事が、よくあるってこと?

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