ほら、笑って笑って
「こんなに…沢山…。」
ページをめくりながら、つい言葉が出ていた。
「そうだよな、驚いて当然だよな?ごめん優衣ちゃん。」
隼人さんは悲しそうな申し訳なさそうな複雑な表情を浮かべ、そう呟いた。
「さっきも話したけど、本当はあの日、伝えたかったけど言い出せなかった。」
「隼人さん…。」
「あの男の話ですっかりチャンスを逃して。……いや、でも、こんなのは言い訳だな。」
言葉を区切って、隼人さんはゆっくり目蓋を閉じた。
膝の上で手を組み俯く、何気ないはずのその動作から目が離せない。
釘付けになってしまう。
「本当はデータを全て削除するべきだった。そうすれば良かった。
でも出来なかった。どうしても、優衣ちゃんを消したくなかったんだ。」
熱っぽい優しい瞳が、私を捕らえて離さない。
ドキドキして、鼓動が早すぎて、胸が苦しくなる。
「女々しいけど、あの日からずっと、優衣ちゃんの事が頭から離れない。」
隼人さんはそう囁きながら、私の手をとる。