ほら、笑って笑って
ちょっとだけ意地悪な顔をして囁く隼人さん。



私の知らない表情。

もっと、見たい。見せて欲しい。




ゆっくり息を吸って呼吸を整える。


それから、重なり合う手にきゅっと力を込めた。



「優衣ちゃん?」


「――私、私も…惹かれていました。常務のところから、私を連れ出してくれた時から。

だから、不謹慎かもしれませんが、隼人さんに会いたくてあのお店に行ったんです。」



「あの、再会した日の事?」


隼人さんは少し驚いた表情をした。




「……はい。もちろんお礼も伝えたかったけど、本当は…隼人さんに会いたかったか………ら」




言い終ると同時位に、

私の体はあたたかい隼人さんに包まれていた。


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