ほら、笑って笑って
「……あぁ。駄目だな。」
「え?」
「優衣を見ると、触りたくなるよ。」
隼人さんはそう呟きながら、両手を私の肩に乗せ、ぎゅうっと目を閉じた。
子供みたいに大袈裟に顔をしかめながら
「我慢、がまん。」
なんて呪文の様に呟くから。
思わず笑ってしまった。
すると、また、いつもの笑顔で私を見つめ優しく頭を撫でてくれる。
「もう少しで撮り終わるから、仕事に戻るよ。」
「…はい。」
「俺にもコーヒーお願いします。」
ヒラヒラと後ろ手を振りながら、隼人さんは事務所に戻って行った。
わざと大袈裟に演技して場の雰囲気を変えてくれたり、あのまま流されたりしないところとか、やっぱり大人だと思う。