ほら、笑って笑って
カシャ
カシャ
幾度となく切られるシャッター。
隼人さんは桜を撮影しているのだと、思い込んでいた。
だから、私はずっと、桜を見上げていた。
「優衣、笑って?」
え?
何気なく隼人さんの方を向く。
「ほら、笑って笑って。」
カシャ
カシャ
隼人さんの立派な一眼レフは私の方を向いていた。
「やだ、隼人さん。何で私を撮るの?」
撮影されてると頭が理解した途端恥ずかしくなって。
顔はどんどん紅く染まる。
だけど隼人さんはお構い無し。
「撮りたいから。」
さらりと言い放ち、シャッターを押し続ける。
「///…でも、私より桜の方が綺麗だし」
口ごもりながらも反論するのに、隼人さんのカメラはカシャカシャ音を立てる。
「俺、このしだれ桜は毎年撮影してる。圧倒的な存在感、素晴らしいし、飽きないから。」
「それなら」
「でも今は…――優衣を。この桜を見て感動してる、優衣を撮りたいんだ。」