ほら、笑って笑って

色気たっぷりの眼差しで、優しくて甘いその声で、私から反論の言葉を奪ってしまう。



撮られている事を諦めつつ、それでも恥ずかしいから。


「…ねぇ隼人さん?」


誤魔化す為に話しかける。


「…ん?」

「どうして、連れて来てくれたの?」




カシャカシャ

鳴り止まない音。


周りの花見客は、不思議そうに私達を眺めて行く。


桜は撮らずに私ばかり写すから。

確かに変だよね。



「――優衣に、この桜を見て感動して欲しかったから。」


「感動、しました。」


「日本人は桜が大好きだから、この時期にはあちこちで見られる。何もさくらの名所まで出掛けなくても、学校の校庭や公園で咲き誇る桜だって十分綺麗だ。」

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