ほら、笑って笑って


帰りの車の中。


「――結局、"桜を見て感動した優衣"じゃなくて"恥ずかしがる優衣"が沢山撮れたなぁ。」


ハンドルを握る隼人さんは前を見たままぽつりと呟いた。



「…隼人さん意地悪。」



小声でそう返すと、隼人さんはクスリと笑って私の頭を撫でる。



「優衣は本当に可愛い。」



まるで小さな子供に言うみたいな感じ。

でも嬉しくて、ついつい笑顔になってしまう。



「このまま家に送るから。」


「あ……うん。お願いします。」


「優衣?今の間は何?もしかして…帰りたくなかった?」



…う。

さすが隼人さん。

図星です。



お泊まりを期待していたのがバレバレで何だか恥ずかしくなって、しばらく俯いてやり過ごしていた。


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