ほら、笑って笑って
「優衣、ちょっと出版社に打ち合わせに行って来るから。」
「あ、はい。気を付けて。」
隼人さんは今は売れっ子のカメラマン。
だけど、昔からお世話になっている出版社の仕事は、どんな些細な物でも引き受けている。
売れない頃から面倒を見て貰ったからだそう。
そんな律儀で真面目なトコロも、私の胸をきゅんとさせてくれる。
「さて、と…」
凝ってしまいそうな肩を回しながら、時計に目をやると3時を過ぎていた。
少し休憩しよう。
そう思い、事務所を出てキッチンへと向かう。
そしてコーヒーを淹れリビングのソファに座る。
カップに口をつけながら、ふと、本棚が目についた。
綺麗に整理されている沢山の本。
その一冊から何かはみ出している。
メモ?
何でだろう。
何故かとても気になって、立ち上がり本棚に近づいた。