ほら、笑って笑って
目の前のケーキをフォークで切ってみるものの、口に入れる気にはならない。
そして社長も、コーヒーにスプーンを入れてクルクル回していた。
その動作は、何をどう切り出すか悩んでいる様で。
ためらいながらも口を開く。
「…あの、社長も知っているという事は…隼人さんの……」
「優花ちゃんはね、隼人の同級生なの。」
「…え、あ…」
社長は私の質問を遮る様に話始めた。
「二人は同じ高校に通っていたわ。その頃から隼人はカメラマンを目指していて、優花ちゃんは雑誌モデルをしていた。」
「…モデル。」
「…ええ。学生の内は雑誌の専属モデルだったけれど、卒業してからは少しずつコマーシャルとかにも出る様になって……。」
「テレビにも出てたんですか?……でも、私優花さんの事知らなかったです。」
ぽつりと呟やくと、社長は悲しそうな顔で俯いた。
「…――優花ちゃんは、事故で亡くなったの…」