ほら、笑って笑って
「10年以上経っても優花が忘れられなくて、このままずっと、それこそ死ぬまで優花を愛し続けるなぁ。なんて考えてたんだ。
だけど、あの公園で優衣を見た時。
年甲斐もなく、一目惚れみたいにドキドキしてさ。」
話ながら、少し恥ずかしそうに私を見つめる隼人さん。
だから私も、ドキドキしてしまう。
「とにかく目が離せなくて、夢中でシャッターを切っていた。
"なんとなく優花に似てるから、惹かれるのか?"
自分に問いかけてみたけど、違うんだ。
持っている雰囲気は似てるけど、顔も少し似てるけど、やっぱり違った。
優花は落ち着いた花のある女性だった。
でも優衣は…。
俺の受けた第一印象は可愛いって事。」
「か、可愛いなんて!私…ちっとも可愛くないよ?」
いたたまれなくて、必死で否定する。
だけど、そんな私を見て、隼人さんはクスリと笑う。
「可愛かった。落ち込んだり、ところ構わず泣いたり、怒ったり…くるくる表情を変える優衣がとにかく可愛かった。」
そう言いながら、隼人さんは左手を伸ばし、私の右頬を優しく撫でる。
「隼人さん。その…ちゃんとハンドル持って運転して?」
恥ずかしくてくすぐったくて真っ赤になりながら、ゴニョゴニョとお願いした。
本当はもっと触れていて欲しいけど。
そんな私の気持ちはばればれなのか。
赤信号で車が停まると、隼人さんの顔がゆっくり近づいてきて、唇が重なった。