ほら、笑って笑って




都心から離れ、静かな別荘地に着いた。



ほぼ山頂に近いその場所は、空気が澄んで少し冷たかった。




「ここは優花の、実家の近く。」


「……」




何も言えず、ただ隼人さんを見つめていた。



「もう少し走ると、墓がある。」



隼人さんは、時折私に視線を向けながら説明してくれた。




「…遠かった…ね。」



隼人さんのマンションからここまで、二時間以上かかるはず。


この距離を、隼人さんはどんな気持ちで走って来たのかな?



優花さんの墓前に、何を伝えるの?


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