ほら、笑って笑って
通話を終え病院内に戻る。
そろそろ点滴も終わる頃のはず。
処置室を覗くと、笑顔の両親が見えた。
「――お母さん、大丈夫?」
「優衣、……心配かけてごめんね。」
お母さんは私を見て一瞬笑顔になったけど、すぐに表情を曇らせた。
「それに、隼人さんの大事な個展の会場で、倒れたりして…」
「いいよ。大丈夫だから。隼人さんもそんな事気にしてなかったよ?」
私の言葉を聞いて、お父さんもゆっくり頷いた。
そうしてお母さんの肩を優しく叩く。
「そんな事気にしなくて大丈夫だ。今は、家に帰ってゆっくり休みなさい。」
「え?もう帰っていいの?」
「ああ。いいそうだ。」
お父さんはそう答えながら、お母さんのバッグを持ち立ち上がる。
「お母さん立てる?」
「もちろんよ、もうすっかり元気よ。」
お父さんについて、歩き出すお母さん。
その顔に笑顔が戻っていたから、安心してほっと胸を撫で下ろす。