ほら、笑って笑って


お母さんは、何処だか分からない場所に連れて行かれ



車の中で、三人の男達に、犯された。




「……それから、車から放り出された時には、目隠しされたままだったけど、うっすら明るさを感じたの。夜が明けるんだって、ぼんやり思った。

でもね、身体が動かなかった。自分に起きた事が理解出来なくて、頭もはたらかなくて……手も足も動かせるはずなのに、歩く事も、目隠しを外す事も出来なかった。」




お母さんは泣きながら、ぽつりぽつりと話す。




息苦しさが、私にも伝わる。

お母さんの痛みが、私にも伝わる。



涙を堪える事なんて出来なかった。







「……どれくらい時間が経ったか分からなかったけど、遠くから犬の鳴き声が聞こえてきたの。
それは、どんどん近づいて来て…………



『貴女どうしたの!?大丈夫?!』







声をかけてくれたその犬の飼い主が、 私を助けてくれた。

両親に連絡してくれて、私を自分の自宅に連れて行って、服を貸してくれた。

暖かいココアをいれてくれて……
美味しくて、甘さがじんわり身体に染み渡って、涙が出たの。

やっと自分に起きた事実を整理出来て、
恐かったって………思って……苦しくなって………大声をあげて泣いたの。


その人は、両親が来るまでずっと、私を抱き締めてくれた。

『恐かったね、可哀想に、辛かったね』


何度も何度もそう囁きながら、一緒に涙を流してくれた。」







「…それが、優花を引き取って育ててくれた、"小峠さん"なの。」



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